いきものらしさ

遺伝、発生、分化などの様々な時空間スケールにおける生きものらしさは、いったいどのように生まれるのでしょうか。生きものらしさが現れる原理は、生物を構成する個々の物質要素の詳細よりも、それらの作り出すダイナミクスやその状態に内在されていると考えています。そのような生命的なダイナミクスを表す新しい数理モデルの研究を進めています。

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研究テーマ(いきものらしさ)

複雑適応システムの構造と発展

生命システムのように、環境とシステムが曖昧な重なりのもとに、環境変化に対して適応的に構造を複雑化し、機能を創成するメカニズムとはどのようなものでしょうか。ウイルスの内在化による分子進化、細胞の集まりによる個体発生、ヒトの社会性行動の創発、人工システムでは、製品の内部構造の複雑化と多様な機能の創出、これらは無関係に見えて、同じ仕組みのもとに生じていると考えています。このような複雑適応システムの構造と発展について、情報学・数学・物理学の融合により、新しい研究を進めています。

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生命システムの階層性と制御ネットワーク

個体発生は、遺伝子の発現が時間・空間的に適切に行われることで生じます。しかしながら、最終的に身体サイズになる空間スケールまでに、たった数十マイクロメートルの細胞のなかの、さらに小さな核内にあるDNAによって、どのように個体発生は制御されているのでしょうか。ここには、遺伝子制御ネットワーク、タンパク質相互作用ネットワーク、細胞間相互作用ネットワークの異なるスケールにおける制御ネットワークが、それぞれのスケールにおけるダイナミクスを制御するのみならず、異なるスケールに跨る制御を実現するために、発生の各段階における器官や組織の形状を遺伝子発現状態にフィードバックするメカニズムがあると考えられています。その候補の1つには、力学的な場がシグナルとして働く重要な役割があることがわかってきました。

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アクティブマター

ブラウン運動ではない一方向性の運動が生じる分子や物体をアクティブマターと呼んでいます。細胞内には、アクティブマターが要素となった巨大なアクティブマターシステムが存在しており、細胞の様々な運動の”源”となっています。さらに、このような細胞は、それ自身もアクティブマターであり、周りの細胞と相互作用して、集団的に協調した運動を示します。アクティブマターは、どのようにして動くことが可能となるのでしょうか、また、スケールを超えて協調した運動が生じるためのメカニズムとはどのようなものでしょうか。この問題は、生物に限りません。複数のロボットによる協調的な仕事や自動運転機能のある自動車が多数集まったときに生じる機能(問題)を考える上で重要となります。非平衡系の物理学を用い、階層性を捉えた機能発現の研究を行っています。

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研究論文

研究の成果

「わかる」をわかりたい

2022年2月18日

森川健太郎、富田直秀、井上康博
生命と「わかる」の数理モデル化の試み
紀要『日本哲学史研究』第18号

究極!カブトムシの超絶折り畳み

2021年1月13日

Keisuke Matsuda, Hiroki Gotoh, Haruhiko Adachi, Yasuhiro Inoue, Shigeru Kondo 
Computational analyses decipher the primordial folding coding the 3D structure of the beetle horn, Scientific Reports (2021)

論文

アクチン繊維の棒状排除体積効果が様々な秩序構造を生み出す仕組み

2020年1月2日

Jung W, Fillenwarth LA, Matsuda A, Li J, Inoue Y, Kim T
Collective and contractile filament motions in the myosin motility assay, Soft Matter (2020)

制限された空間内の上皮組織の折り畳み

2019年11月15日

Inoue Y, Tateo I, Adachi T
Epithelial tissue folding pattern in confined geometry, Biomechanics and Modeling in Mechanobiology (2019)

組織形態形成のエネルギーランドスケープ

2019年9月7日

Takeda H, Kameo Y, Inoue Y, Adachi T
An energy landscape approach to understanding variety and robustness in tissue morphogenesis, Biomechanics and Modeling in Mechanobiology (2019)

アクチン細胞骨格の収縮性が制御される仕組み

2019年5月15日

Matsuda A, Li J, Brumm P, Adachi T, Inoue Y, Kim T
Mobility of Molecular Motors Regulates Contractile Behaviors of Actin Networks, Biophysical Journal (2019)

神経細胞内の分子伝達は、アクチン網目にフィルタリングされる

2019年5月1日

Kazuki Obashi, Atsushi Matsuda, Yasuhiro Inoue, Shigeo Okabe
Precise Temporal Regulation of Molecular Diffusion within Dendritic Spines by Actin Polymers during Structural Plasticity, Cell Reports (2019)

モータータンパク質の運動性がアクチンネットワークの収縮性を制御する仕組み

2019年4月22日

Matsuda, A., Li, J., Brumm, P., Adachi, T., Inoue, Y., Kim, T.
Mobility of Molecular Motors Regulates Contractile Behaviors of Actin Networks, Biophysical Journal (2019)

細胞同士が協調して動くには、位相をずらした振動が大切

2019年2月19日

Asako Shindo, Yasuhiro Inoue, Makoto Kinoshita, John B Wallingford, PCP-dependent transcellular regulation of actomyosin oscillation facilitates convergent extension of vertebrate tissue, Developmental Biology (2019)

カブトムシ角原基形成の細胞分裂とアピカル収縮

2018年8月

Adachi H, Matsuda K, Niimi T, Inoue Y, Kondo S, Gotoh H, Anisotropy of cell division and epithelial sheet bending via apical constriction shape the complex folding pattern of beetle horn primordia, Mechanisms of development (2018)

反応場そのものの幾何形状が変化する

2018年6月4日

Okuda S, Miura T, Inoue Y, Adachi T, Eiraku M, Combining Turing and 3D vertex models reproduces autonomous multicellular morphogenesis with undulation, tubulation, and branching, Scientific reports, 8, 1, 2386

​​神経上皮細胞は親からもらったエネルギーで旅立つ

2018年4月20日

Shinoda T, Nagasaka A, Inoue Y, Higuchi R, Minami Y, Kato K, Suzuki M, Kondo T, Kawaue T, Saito K, Ueno N, Fukazawa Y, Nagayama M, Miura T, Adachi T, Miyata T, Elasticity-based boosting of neuroepithelial nucleokinesis via indirect energy transfer from mother to daughter, PLoS biology, 16, 4, e2004426

​カブトムシの角のもとはシワシワ

2017年10月24日

Keisuke Matsuda, Hiroki Gotoh, Yuki Tajika, Takamichi Sushida, Hitoshi Aonuma, Teruyuki Niimi, Masakazu Akiyama, Yasuhiro Inoue, Shigeru Kondo, Complex furrows in a 2D epithelial sheet code the 3D structure of a beetle horn, Scientific reports (2017)

​凹か凸か、細胞が決める仕組み

2017年7月13日

Yasuhiro Inoue, Tadashi Watanabe, Satoru Okuda, Taiji Adachi, Mechanical role of the spatial patterns of contractile cells in invagination of growing epithelial tissue, Development, growth & differentiation (2017)

中枢神経系の原基をつくる細胞力学

2016年5月18日

Yasuhiro Inoue, Makoto Suzuki, Tadashi Watanabe, Naoko Yasue, Itsuki Tateo, Taiji Adachi, Naoto Ueno, Mechanical roles of apical constriction, cell elongation, and cell migration during neural tube formation in Xenopus, Biomechanics and modeling in mechanobiology (2016).